2026.05.08 ISSUE WEEKLY OBSERVATION 第壱号 / NON-PERIODIC
月刊・観察日記 / SCOOP

風俗口コミ探偵の観察日記

COMMERCIAL 70,453 + PRIVATE 10,842 ── 19 YEARS OF FIELD NOTES

第貳話 Ⅰ ── 媒体のクセ

はじめて投稿する人ほど甘い
── 初投稿者の評価 5 率は 79%、常連は 71%

★5 ばかりが並ぶ画面を、今度は 書き手のほう から眺め直してみる。集めた 7 万件を「その投稿者が累計何件書いているか」で分けてみたら、初投稿者と 100 件超のヘビー投稿者で、評価の出方ははっきり違っていた。一番分かりやすいのは、初投稿者だけが ★1〜3 をほとんど書かない ことだった。

投稿者を「累計何件書いているか」で分けてみる

商業口コミ 70,453 件 を、書き手の累計投稿数で 5 つのバケットに分けて並べた結果がこれ。

累計投稿数件数★5 率★1〜3 率
1(観察期間中、その投稿者の口コミは 1 件のみ)10,81679.0%2.7%
2 〜 5 件12,21973.6%7.8%
6 〜 20 件18,36475.9%7.5%
21 〜 100 件17,58171.2%8.9%
100 件超11,47371.5%8.8%
投稿者経験別の評価分布。初回投稿者の★1〜3率だけが2.7%で突出して低く、100件超では8.8%まで上がる
FIG.1 ── 投稿者の累計件数で評価が変わる。初回投稿者だけが低評価をほぼ書かない(n=70,453)

数字を眺めて、まず気づくのは「1 件しか書いていない人」の列だけがちょっと違うことだ。

  • ★5 率:79.0%(他の 4 バケットは 71〜76% に収まっている)
  • ★1〜3 率:2.7%(他は 7〜9%)

★5 率は 7 ポイント高く、★1〜3 率は 3 倍以上低い。100 件超のヘビー投稿者と並べると、線がきれいに分かれる。

一番大きな差は、低評価を書くか書かないか

★5 率の差は 79.0% と 71.5% で 7.5 ポイント。これも小さくはない。ただ、人の感想は 5 寄りに偏るというのが 第 1 話 で見た大前提だから、★5 率だけ並べてもピンと来ないかもしれない。

代わりに ★1〜3 率(低評価を書いた率)を見ると、構造が立ち上がる。

  • 初投稿者:2.7% 100 人に 3 人しか低評価を書かない
  • 100 件超:8.8% 100 人に 9 人が低評価を書く

3 倍以上の差だ。100 件以上書く人と、1 回しか書いていない人とで、「文句を書く確率」がここまで違う

初投稿者の口コミからは、不満が落ちている

なぜ初投稿者はベタ褒めになるのか

観察記録を眺めてみると、いくつかの力が同時に働いていると見える。

1. はじめての高揚

最初の体験は、それだけで肯定の側に寄る。書き手の頭の中で「悪くなかった」より「良かった」のほうへ自然と倒れる。これは風俗に限った話じゃなくて、初めての映画・初めての旅行・初めて買った車のレビュー でも起きる。

2. 書く人は、満足した人

期待外れの体験をした書き手は、口コミを書く気力そのものを失う。第 1 話で見た「もう関わりたくない」が先に来る現象だ。これが起きると、初投稿の場には、満足した人だけが残る。書かれていないものは、こちらからは観察できない。

3. 「ふつう」のラインを知らない

初めて行った人は、比較する対象を持っていない。「ここの接客はその辺の店と比べて〜」という言い方ができるのは、何店か行った人だけ。ふつうのラインを持っていない書き手は、目の前の体験を高めに評価しがち になる。

3 店ほど行ってみると、書き手の中で「★3 の接客」「★4 の接客」「★5 の接客」の感覚が立ち上がってくる。経験量が増えると、ベースラインが下がる。100 件超のヘビー投稿者で ★5 率が 71% に落ち着くのは、書き手の中で 基準値そのものが厳しくなった 結果と読める。

4. 書きながら自分を納得させる

口コミを書く行為そのものが、自分の選択を肯定する作業になる側面もある。書きながら「あれは良かったな」「あの瞬間は嬉しかったな」と思い出すと、評価は ★5 の側へ寄っていく。

この 4 つはバラバラに動いているわけじゃなく、全部が重なって、初投稿者の ★5 率を 79% にまで押し上げている

だから「初投稿者=サクラ」とは言わない

数字だけ見ると「初投稿者の口コミはみんなウソ」と読みたくなるけど、観察してきた中では、その読み方は雑すぎる。

理由は単純で、初投稿者の中にも、本当に良い体験をした人が大勢いる からだ。仮説 1〜4 は、書き手が嘘をついている話ではなくて、書ける状況に置かれた書き手の評価が、自然と甘くなる構造 の話だ。

「初投稿者の口コミは捨てアカだ、ステマだ」と言ってしまうと、本当に良い店をはじめて見つけて、はじめて口コミを書いた人を、まとめて疑うことになる。それは観察者の仕事じゃない。

代わりに渡したいのは、読み手の側の補正 だ。

持ち帰れる発明 ── 投稿者経験曲線

その口コミを書いた人が、累計で何件書いているかを見る。投稿数の多い人ほど、★1〜3 を書く確率が 3 倍以上高い。

商業口コミサイトの多くは、ハンドル名のところに「総投稿数:N 件」のような表記を出している。そこを見るだけで、その口コミに どれくらい補正をかけて読むか が決まる。実用的には、店舗ページを開いたら次の順番で目を動かす。

  1. ★ の分布の形を見る(第 1 話の道具)
  2. 個別の口コミを開く前に、書き手の累計投稿数だけを横目で確認
  3. 累計 1 〜 5 件の書き手は、軽く読み流す
  4. 累計 20 件以上の書き手の口コミは、丁寧に読む

第 1 話で渡した「★5 はベースライン」と組み合わせると、口コミにかかる時間はぐっと短くなり、拾える情報量はむしろ増える。

書き手の母集団は、媒体の 投稿動機の設計 でも動く。投稿に金銭的な報酬を出している投稿集約型サイト(ホンネレポ は投稿で Amazon ギフトが配られる)と、報酬なしで投稿を集めている投稿サイト(仁義なき風俗体験ブログ)では、初回投稿者の母集団そのものが別物になる。本記事の数字は商業サイト 1 つに絞った話だが、同じ 投稿者経験曲線 の "形" は媒体ごとに違って立つ。

TAKEAWAY ── 持ち帰れる発明

累計投稿数 1 の口コミは、信頼度を半分くらいに割り引いて読む。100 件超の口コミは、文章のクセさえ把握できれば、相当な情報密度で読める。── この読み替えを「投稿者経験曲線」と呼ぶことにする。

NEXT ── 第參話

リピ確定」と書いた人の 72% は戻らない。

第 1 話で「★5 が 7 割」、第 2 話で「★5 を最も書くのは初投稿者」を確認した。ここまでは口コミの 外側 の話だった。第 3 話からは、書かれた言葉の中身に入っていく ── 強リピ宣言 2,615 件を追跡した結果。

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