同じ人が、同じ店に何件書いているか
商業口コミの 70,453 件を、投稿者 × 店舗 の組み合わせで集計し直してみる。同じハンドル名が、同じ店に何度書いたかを数える。50 件以上書かれている組み合わせを上位から並べると、こうなる。
| 投稿者 × 店舗 | 投稿件数 | 平均評価 |
|---|---|---|
| 投稿者 α × 店舗 1 | 126 件 | ★4.94 |
| 投稿者 β × 店舗 2 | 122 件 | ★4.98 |
| 投稿者 γ × 店舗 3 | 95 件 | ★4.77 |
| 投稿者 δ × 店舗 4 | 92 件 | ★4.83 |
| 投稿者 ε × 店舗 5 | 88 件 | ★4.74 |
| 投稿者 ζ × 店舗 6 | 84 件 | ★3.99 |
| 投稿者 η × 店舗 7 | 82 件 | ★4.04 |
| 投稿者 θ × 店舗 8 | 74 件 | ★5.00 |
| 投稿者 ι × 店舗 9 | 60 件 | ★4.97 |
| 投稿者 κ × 店舗 10 | 60 件 | ★4.15 |
100 件超のペアが 2 組、50 件以上のペアが上位だけで 十数組 ある。100 件以上同じ店に通って、毎回口コミを書く書き手が、観察記録の中に複数いる。
1 人で店の平均点を 0.4 ポイント押し上げる例
第 5 話「書き手のクセを 3 タイプで読む」 で見た「100% ★5・少数店舗」の甘めタイプは、特定の店に集中して投稿している場合がある。観察記録の中で目立つのは、1 人の常連が、店の平均評価をどれくらい押し上げているか という効果だ。
例えば店舗 8 の場合、投稿者 θ の 74 件はすべて ★5。この人を抜いて店全体の平均を出すと、他の書き手(n=150 件前後)の平均は ★4.6 まで下がる。1 人の常連で、店の評価が 0.4 ポイント変わる ことになる。
1 人で、店の平均を 0.4 ポイント 押し上げる。
同じことが別の店でも起きている。投稿者 ε × 店舗 5(88 件、★4.74)も、その人を抜くと残りの平均は ★4.4 前後まで落ちる。投稿者 ι × 店舗 9(60 件、★4.97)に至っては、ほぼ全件が ★5 で、その 1 人が店の平均を支えきっている。1 人で 50 〜 100 件分の口コミを書く看板客は、店の評価の "下駄" として動いている ことが多い。
これは、その常連が嘘を書いているという話ではない。「この店との相性が良い書き手が、口コミ全体の評価を引き上げている」という事実があるだけだ。読み手の側がそれを把握しているかどうかが問題になる。
平均が低い看板客もいる
上位 10 組の中で、平均評価が 4.5 を切っているペアが 2 つある。
- 投稿者 ζ × 店舗 6:84 件、平均 ★3.99
- 投稿者 η × 店舗 7:82 件、平均 ★4.04
84 回も同じ店に通っているのに、平均が ★4 を切る。これも「相性」とは別の現象として面白い。通い続けるけれど、口コミでは正直に評価を散らす書き手 がいるということだ。
このタイプの書き手は、第 5 話 の「ばらける」に近い。同じ店に通っているのに、★1〜3 を一定割合で書く。書き手の率直さが、看板客のなかにも残っている。
このタイプの看板客が混じっている店は、読み手の側にはむしろ追い風になる。常連が ★1〜3 を含めて素直に評価しているなら、店全体の ★ にも下駄が乗りにくい。常連寄与率の差が小さい店ほど、★ をそのまま受け取って読んでも大きく外さない、ということでもある。
持ち帰れる発明 ── 常連寄与率
口コミを読む前に、店の平均評価が誰によって作られているか を見ておく。具体的には、
- 常連寄与率 = 上位 1〜3 投稿者を除いた平均と、全体平均の差
が大きい店ほど、評価が 少数の書き手に依存している。差が小さい店は、多くの書き手の評価が均されている。確認の手順はシンプル。
- 店舗ページの「投稿者」一覧を見て、同じハンドル名が何度出てくるかを数える
- 同じハンドル名で 10 件以上ある人がいたら、その人の投稿だけを除外して読んでみる
- 残った口コミの ★ 分布が、店の "実態" に近い
商業サイトの多くは、このフィルタを直接サポートしてくれていない。だから読み手の側で、同じ書き手の連投を頭の中で除外する 習慣を持つ。それだけで、店の評価の見え方が変わる。
常連寄与率 ── 上位 1〜3 投稿者を除いた平均と、全体平均の差。差が大きいほど、その店の ★ は 少数の常連に乗っかっている。同じハンドルが 10 件以上ある人の投稿を頭の中で除外して読み直すだけで、店の "実態" の ★ 分布が見えてくる。
ちなみに、看板客の構造は媒体の形そのもので 見えやすさが違う。商業サイトでは投稿が店舗ページにフラットに並ぶので、同じ書き手の連投を頭の中で集約しないと看板客は見えてこない。一方、個人ブログ型のサイト(風俗放浪記 や カス日記)では、書き手が同じ嬢に通った記録がそのままタイムラインで並ぶ。看板客の存在が、媒体の形そのものに織り込まれている。読み手は集計しなくていい代わりに、書き手のクセが文章に直接乗ってくる。