同じ 1 行が、何店舗にまたがるか
商業口コミの「良いところ」欄から、長さ 10〜60 字の短文を抽出して、5 店舗以上で使われている同一文 を上位から並べた。
| 同一フレーズ | 店舗数 | 件数 |
|---|---|---|
| 「女の子のレベルが高い」 | 31 | 39 |
| 「女の子のレベルが高い。」(句点違い) | 17 | 30 |
| 「コストパフォーマンス」 | 13 | 14 |
| 「女の子のレベルが高いと思います。」 | 8 | 9 |
| 「女の子のレベルが高い!」 | 7 | 7 |
| 「女の子のレベルが高いです。」 | 7 | 10 |
| 「サービス内容(複数行の定型)」 | 6 | 46 |
| 「女性のレベルが高い!」 | 6 | 6 |
| 「料金がリーズナブル。」 | 6 | 7 |
| 「スタッフの対応が丁寧」 | 5 | 6 |
「女の子のレベルが高い」のバリエーション
特に目立つのは「女の子のレベルが高い」の 句読点違いだけで複数のバリエーションが立ち上がる ことだ。
- 「女の子のレベルが高い」(句点なし、31 店舗)
- 「女の子のレベルが高い。」(句点あり、17 店舗)
- 「女の子のレベルが高いと思います。」(8 店舗)
- 「女の子のレベルが高い!」(7 店舗)
- 「女の子のレベルが高いです。」(7 店舗)
- 「女性のレベルが高い!」(女→女性、6 店舗)
- 「女の子のレベルが高いところ」(5 店舗)
のべ 81 カウント分 の店舗で(ある店舗が複数バリエーションを使っているケースもあるので、実店舗数はもう少し少なくなる)、ほぼ同じ意味の 1 行が使い回されている。書き手の側で 「女の子のレベルが高い」を選択肢から選ぶような感覚で書いている と読んだほうが自然だ。
おもしろいのは、バリエーションが 句読点・語尾・感嘆符のレベルでばらけている ことだ。1 つの原型から派生したというより、それぞれの書き手が 独立に、ほぼ同じ短文に着地している ように見える。書きたい中身が薄いとき、書き手の頭の中の選択肢は数語に絞られる。「女の子」「レベル」「高い」── この 3 語の組み合わせは、商業口コミの「良いところ」欄でいちばん降ってきやすい単語列なのだろう。表ではこの系統の 7 バリエーションだけを切り出したが、テーブル 2 位の「コストパフォーマンス」のように、単語のみで意味が完結する省略形も別系統として一定量ある。書き手の中で 「短くて埋まれば何でもいい」という入力モード が立ち上がっていることが、定型文を量産する。
31 店舗で 使い回された 1 行。
「使い回し = サクラ」ではない
これらの定型文を見ると「サクラ確定」と読みたくなるが、観察してきた中では、それは雑すぎる。別の説明として、書き手の慣性 も考えられる。
- 「良いところ」欄に書くことを、毎回考え直すコストが高い
- 過去に書いた文章をコピペしている
- 商業サイトの入力フォームに、書き始めの誘導テキストや例文がある可能性
- 書き手の中で「とりあえずこれ書いておけば伝わる」という型が固まっている
これらは、書き手が嘘を書いている話とは別のレイヤーの話だ。書く動機の薄さが、定型文を呼び寄せている という構造のほうが、観察記録から見える形に近い。
定型文の見抜き方
口コミを読むときに、「良いところ」欄を 30 秒だけ眺めてみる。
- 2 行以下、20 字未満 の短文だけが書かれているか
- 「女の子のレベルが高い」「コスパ」「対応が丁寧」のような 抽象的なキーワード だけで終わっているか
- 改行ありの 箇条書き型の定型 で、店舗のサービス情報そのままが貼られているか
これらが当てはまる口コミは、書き手の温度がほとんど乗っていない と判断できる。第 4 話「改善点:特になし」 と組み合わせると、文章レイヤーで本気度を測るフィルタがそろう。
「良いところ」欄に、20 字以上のオリジナル表現が 1 つでもあるか。あれば書き手の温度が乗っている、なければ定型文の慣性で書かれた可能性が高い。書き手の固有の語彙(その人にしか出てこない比喩、具体的なエピソード、特定の場面の言及)が含まれているかどうかで、その口コミの読む価値が決まる。
「女の子のレベルが高い」は、書き手が 本当に "レベルの高さ" を確認した上で書いている とは限らない。「とりあえずこの 1 行を入れておけば良いところ欄が埋まる」という機能語として使われているケースが多い。第 4 話 で渡した「改善点ブロックに具体的な不満があるか」と、本ノートの「良いところ欄に独自表現があるか」を並べると、文章レイヤーで本気度を測る 2 つのフィルタ が完成する。
この 2 つのフィルタは、方向が違う。第 4 話の「改善点:特になし」率は、書き手が 粗探しをしているか の検査だ。本ノートの定型文チェックは、書き手が 何かを伝えようとしているか の検査だ。前者は不満の側を、後者は満足の側を見ている。両方が空に近い口コミは、書き手の温度がほぼ乗っていない。両方に中身がある口コミは、評価の数字以上に読む価値がある。文章レイヤーは、この 2 軸の組み合わせで読む。
ちなみに、テンプレ表現は媒体の入力フォーム設計と密接に絡んでいる。「良いところ」欄を必須項目にしている商業サイトと、書き手が自由に書ける投稿集約型ブログ(仁義なき風俗体験ブログ)や個人ブログ型(カス日記)とでは、テンプレの種類そのものが違う。前者は「女の子のレベルが高い」のような汎用フレーズが量産され、後者では「〜風俗体験レポ」のような 記事タイトルの統一フォーマット が立ち上がる。書き手の温度を測るときは、まず媒体側のテンプレ生成圧がどこから来ているかを見ておくといい。